映日堂

支店

洗濯物、ベランダで干すか室内で干すか

休日の朝、パン屋さんへ朝食を買いに行くため外に出た。車に乗り込もうとしたとき、ふと近くのアパートのベランダで洗濯物を干している人が目に入った。

もう早朝とは言えない時間ではあったが、冬の朝の空気はまだキンと冷たく、濡れた洗濯物をひとつひとつハンガーにかける作業はとても寒そうに映った。車を発進させてからも、その人が洗濯物を干していく映像がなんとなく頭に残り続けた。

なぜこんな何てことない光景が引っかかるんだろうと不思議に思っていたが、しばらくしてある可能性に思い当たった。「屋外で洗濯物をハンガーにかけていく」という作業を自分はしないからかもしれない。

わたしが見たあの人はたぶん、洗い終わった服たちをカゴに入れて屋外にある物干し竿まで運び、そこでハンガーにかけたりピンチで挟んだりしていたんだろう。一方わたしは、カゴに放り込むところまでは同じだが、すべての洗濯物をあとは物干しにかけるだけの状態にしてからベランダに持って出る。つまり作業の大半を室内でやっておくのだ。これの何がいいって、どんなに寒い冬の朝でも、暑くてたまらない夏の日でも、屋外の滞在時間が一瞬で済む。

洗濯物を干し終えるまでのたった数分程度で、と甘く見ることなかれ。洗濯物を干すとき、人はたいてい部屋着姿ではなかろうか。そして部屋着とは室内の気温に合わせたものを着ているものだと思う。そうすると、冬や夏のように外と内とで気温差が激しい時期はたった数分でもなかなかに堪えるのだ。洗濯物を干すためだけにコートを着込むこともないだろうし。実際、わたしが見かけたあの人も部屋着であろう服装で、防寒がされているとは思えなかった。

……熱くなってしまったが、ベランダですべての作業をするのにももちろんメリットはある。手間が最小限で済むのだ。ハンガーにセットした洗濯物を直に物干し竿にかけられるのだから、一旦置いておいてまとめて運ぶという一行程が加わるわたしのやり方より確実に早く終わるだろう。

ただ、わたしが室内で洗濯物を準備するのは、元をたどれば実家でそうだったからだ(たぶん)。ここまでで書いたメリットを自分で考えて行動を決めたわけではない。逆に、実家にて洗濯物を干す作業はすべて外でやるのが当たり前だったら、部屋の中で作業の大半を済ませるという選択肢がそもそも生まれないかもしれない。

だから、これはどちらがいいとかではなく、何を重視するかというただそれだけの話だ。わたしは寒いのも暑いのもイヤだし、何より洗濯物を干すという行為がけっこう好きなので多少手間が増えても気にならないから今のやり方に落ち着いている。そして別の人にとっては、「手間を省きたいから」「実家でこうだったから」とか、洗濯物の干し方ひとつにも様々な理由があったりなかったりするだろう。

ある人にとっての常識は、またある人にとっては非常識だ。「常識」とか「普通」とかってそれくらい不確かで曖昧なもので、正解なんてひとつもない。たまにそういうことを漠然と考えるのだけど、洗濯という日常の些細な行動ひとつ取ってもそれは同じだ。

たぶんわたしはあの人を見たとき「寒いんだから室内でやればいいのに」と無意識に感じたんだと思う。でもそれはあくまでわたしの価値観であって、思うのは勝手だけど押しつけるものではないんだよな、などと。

我ながらあまりに話が飛躍しすぎていると思うし、書きながら意味わかんね〜と笑っちゃったけど、休日の朝にこんなしょうもない話を頭の中で展開させている人間もいるのよということでひとつ。