映日堂

ままならない日々のこと

名前のつかない曖昧な関係性に悶える──『ファミレス行こ。』感想

名前のつかない関係、が好きだ。

和山やま先生『カラオケ行こ!』の続編『ファミレス行こ。』も、そんな曖昧な関係の2人を描いた漫画です。

大学生になり東京で1人暮らしを始めた聡実は、ファミレスでアルバイトを始める。そこで再会したのは、ヤクザであり、中学時代に歌を教えた相手である狂児。

相変わらずつかみどころのない彼との微妙な関係性の変化を描いた作品、それが『ファミレス行こ。』です。

和山さんの描く独特の間とシュールな笑いがクセになる。シリアスなシーンもどこか抜け感があり、読んでいて心地よいです。

わたし自身が1年ほど前から大阪に住み始めたこともあり、作中に出てくる大阪ネタがちょっとわかるようになったのが、『ファミレス行こ。』を読んでうれしかったことの1つ。

551の豚まんも、りくろーおじさんのチーズケーキも食べたことあるぞ……! こういうネタを実体験として拾えるとよりリアリティを持って楽しむことができるのでうれしい。


内容については、思っていた以上に聡実が狂児へクソデカ感情を抱えていて、それが最高だよねって話です。

気づいたら狂児にハグしてしまっていて、その理由に思い当たらず悶え悩む様子は、読んでいてなんとももどかしい。

一方の狂児も、組長宅で物陰からこちらを睨む黒猫に聡実を重ねてしまったり。

のらりくらりとしていて何を考えているか掴みづらい人物だと思いながら読んでいたけれど、彼の中にも確実に聡実という存在が入り込んでいることがわかる、個人的にグッと来た描写。

わたくし、ブロマンスというジャンルが大好物でして。友情でも恋愛でもない、男性同士の親密な関係性のこと。バディものとかね。

前作『カラオケ行こ!』では2人は中学生と大人であったためもう少しライトな、ヤクザに振り回される中学生というコメディ要素が強かったように思います。

が、『ファミレス行こ。』では聡実はすでに大学生。まだまだ青い部分が多いものの大人に片足を突っ込んだ彼と、大人として落ち着きも出てくる年齢の狂児は、既存の言葉では定義できない不思議な関係に至っています。

「ようわからんけど大切」。あえて表すならそんな言葉でしょうか。

物語のラスト、聡実が狂児へ正直な思いを吐露するシーンが本当に良すぎた。一連のセリフは、聡実の真面目で誠実な性格が強く表れたものだと感じます。

物語は完結したのでこれからの2人の関係がどうなっていくのかをわたしたちが知る由はない。けれど最後までふわりとすれ違い続けた様子から、このまま「お互いがお互いをなんとなく放っとけない存在」みたいな関係性が続けばいいなあ、なんて思っています。

わたしのように、名前のつかない関係性に振り回されたい人にはぜひ読んでほしいシリーズでした。