映日堂

ままならない日々のこと

さながら卵のように割れ

肉はスーパーで安売りされているときにまとめ買いしている。選ぶのは「メガ盛り」みたいなラベルがついている大きなサイズ。家に帰ったらそれを1回分ごとにラップに小分けに包んで冷凍する。1パックでだいたい3食分くらいだ。

その日も夕食を作ろうと、冷凍してあった豚肉を取り出した。野菜の下ごしらえをしている間に、レンジで解凍する。

チンし終わった豚肉をレンジから出してシンクの作業スペースへと運ぶとき、ふいにぽたぽたっと床に何かがこぼれた。肉汁だ。解凍された肉から汁が垂れている。

あれ、ラップが上手く包みきれていなかった? と少しあわてる。しかしそうしている間にも汁は垂れ続けるので、とりあえず肉を作業スペースにペッと置く。

こうなったらさっさと調理してしまおうと、フライパンを温め始める。サラダ油をちょろっと注いで、肉を包むラップを開こうとしたとき悲劇は起きた。

ラップが底面から裂けて、左右にぱかっと割れたのだ。まるで卵のようにわかれたその中から、肉がぼとんと飛び出す。

2つに分裂したラップを手にしばらく呆然と肉を見つめたわたしにできることは、とりあえずさっさとフライパンに肉を入れてしまうことだけだった。すでに肉汁でべとべとになっている手でむんずと掴んで、フライパンに投入すると、十分に温まっていたようでジューッと音を立てて焼かれ始める。

まだ事態を把握しきれていないわたしは、解せぬ心でそれでもなんとかシンクと床の掃除を済ませた。

豚肉は生姜焼きになった。

次の日。

冷凍していた鶏もも肉を使おうと今日も今日とてレンジで解凍をする。前日の悲劇はまだ頭にあったが、あれはたまたまラップに裂け目でも入っていたのだろうという結論に達していた。ただ運が悪かっただけだ、と。

レンジから取り出してきた鶏肉から汁は垂れていない。ほっ。気が緩んだ状態で包みを解こうとすると、またしてもぱっかりとラップは割れて、鶏肉がどわっと現れた。

さすがに2日連続で同じことが起きると、初日ほどは慌てない。ああ……と無表情で鶏肉をわしづかみ、鍋に放り込む。ラップを捨て、シンクを丁寧に拭き、鍋に火をかけながら、徐々に頭の中が「Why?」で埋め尽くされる。

鶏肉はスープになった。

連続で起きたことは、偶然ではなく必然だ。原因を考えてみたときに、1つだけ心当たりがあった。レンジでの長時間の解凍だ。

今まで200wで5分、裏返して追加で3分みたいな解凍の仕方をしていたんだけど、裏返すのが面倒で一気に8分に設定してみたのだった。低出力とはいえ、皿にものせず長めの分数を加熱したことがラップの破壊につながったのかもしれない。

次に肉を解凍する機会に、その真相を明らかにしなければなるまい。つまりは横着するなってことだけど。