好きな小説家は? と問われたら、わたしは迷わず伊坂幸太郎を挙げる。これは中学生の頃から30歳になった今まで変わっていない。
最初に読んだ作品は覚えていないが、気づいたときにはファンだった。中学校の図書室にあった作品はすべて読み、そのうち新刊を購入するようになった。ゴールデンスランバーが本屋大賞を受賞して書店や図書館で今まで以上に大きく取り扱われるようになると、わたしは前から愛読していたぞと謎の優越感を持ったりしたのは少々恥ずかしい思い出だ(とっくに人気作家だったのだから)。
伊坂幸太郎の小説で1番好きな作品は? という問いには答えるのが難しい。何度も読み返したものといえば『グラスホッパー』だ。3人の殺し屋と妻の復讐に燃える男が織りなす物語はわたしをいつも興奮させた。個性豊かな殺し屋たちが暴れ回る本作はシリーズ化しており、現在4作目までが出版されている。代名詞といえる伏線回収を思う存分堪能したいなら『ラッシュライフ』が最適だ。分厚い作品だが長さを感じさせない面白さがある。他にも挙げればキリがないが、長編も短編も読み応え抜群で読者を飽きさせない。
以前どこかのインタビュー記事で目にしたのだが、伊坂さんは「大事なことほどユーモアで包んで提示したい」というようなことを話されていた(記憶が朧げでニュアンスが違ったら申し訳ない……)。ここに伊坂作品の魅力がつまっていると思う。殺し屋が出てきたり銀行強盗したり死神が主人公だったりと基本的に物騒な内容だが、伊坂さんの書く小説の雰囲気はカラッとしている。希望のないシーンでもむしろどこか明るさを感じさせることさえある。
小説を読む楽しさというものをわたしは伊坂幸太郎の作品からいつも感じてきた。ワクワクして、ハラハラして、この後どうなっちゃうんだろうと気になって仕方がなくて、読み終えたら深い満足感を得る。それこそがわたしにとって小説を読む醍醐味なのだと思う。
中学時代と比べて小説の好みも変わり続けてきたし、小説から離れてしまった時期もあったが、伊坂幸太郎は常に追い続ける存在であった。これからも新作を心待ちにしながら日々生きていく。
今週のお題「好きな小説」