映日堂

支店

コートを買う、春を感じる

ユニクロへ夫のアウターを買いに行った。長く着ていたコートがすっかりぼろぼろで、袖口の周りはほつれて糸が垂れているほどだった。冬に入った頃からずっと「やばいね」「新しいのを買いに行こう」と言っていたのに、気づいたら2月になってしまっていた。

アウターは高級ではなくてもある程度ちゃんとしたもの、長く使えるものを買いたい。だからユニクロは適切ではないかなと思ったが、わたしが見たい服もあるという理由でとりあえず行ってみることにした。店内に入ってアウター売り場を探すと、すっかり端っこに追いやられていて驚いた。そうか、もう完全な冬物は旬を過ぎたのか。

アウターは何種類か残っていて、うれしいことにその中には夫によく似合うものが何着かあった。さらにシーズンオフということで、半額以下の超特価。期待していなかった分とてもテンションが上がり、2人でキャッキャと鏡の前で「どの色がいいかな?」などとはしゃぐ。悩みながらも、最終的にロング丈のキレイめな黒系コートに決めた。これで、ぼろぼろのコートを着た夫を見るたび感じていた「早く新しいものを与えなくては……」という焦りから解放される。焦っていたとは思えないくらい遅くなってしまったが。

お会計を済ませて店を後にしながら、ふと気づく。そうか、2月はとても寒くてまだまだ冬が続く気がしていたけど、あと3週間もしたら3月になるんだ。3月なんて春じゃん。そりゃアウターは残り物として端に追いやられるし、超特価で売り捌かれるよな。季節の流れは自分が思っている何倍も早くて、冬に慣れてきた頃にはもう次の季節が顔を覗かせてくる。最近はどの季節でもそんなふうに感じている。

そういえば、店に入ってすぐの1番目立つコーナーにはスポーツウェアやTシャツが陳列されていた。暖かくなってくると人々は外に出る、そして運動したくなるんだなとちょっとおかしみを感じた。服屋さんで人間の行動パターンを知る。

冬服を買いに行って春が近づいていることを実感する羽目になる、というなんとも楽しい日だった。今日買ったコートがすぐに必要なくなるくらい、きっともう春は近いんだろう。